876プロという物語 中編

kage

2014/09/15 (Mon)

見えない方向性とその結果

ということで初めて765ではない世界を中心としたアイマス展開となったDS、
販促の方向性もこれまでとは異なり、少女漫画雑誌「なかよし」などで特集記事が組まれるなど、
既存の「オタク向け」よりさらに展開を広げ、ファン層の拡大を狙っている節
がありました。
この展開なんかは「プリキュア」の逆バージョンを目指したようにも感じられます。

しかしながらCEROは「C」であり、「15歳以上対象」というチグハグな状態に。
別にCEROは法的な強制力があるようなものでもありませんが、この方向性は明らかに誤りだった、
と言わざるを得ない結果になってしまったというのは事実につながってしまったのです。つまり、
ネタでしかなかった「プロデューサー女子小学生説」はネタ以上にはならなかったわけです。

一方で、それこそ現在のシンデレラやミリオンのような、声優側からのファンが獲得できたかと
いうと、それもほとんどなかった
ように感じられました。これが失敗した理由について、私には
はっきりしたものはわかりません。当時、現在よりもまだまだ「ニコマス」に勢いのあった時代に
おいて、「たるき亭」という公式チャンネルで声優3人が出演する番組を発売前に複数回放送する
力の入れようだったにも関わらず、これがものの見事に不発に終わってしまった
わけです。

「誤っていた」「失敗」「不発」なんてフレーズを先に使ってしまいましたが、要するに売り上げが
芳しくなかった、というのが結果になります。前作SPは3作累計で20万本前後だったのに対し、
DSは5~6万本、という数字
。SPは3本だから、という話が一つ大きくあるのは確かですが、
ニンテンドーDSという、当時圧倒的強さを誇ったハードにおいて、新規層の獲得を失敗しただけで
なく、既存層すら連れてくることができなかった、といえる数字になってしまったのは確かです。

こうなってしまった理由は何か、何が悪かったのか、と考えると色々とあげることは可能です。
美麗なビジュアルをウリにし、PSPにおけるSPでは体裁を保てたモノがDSでは破綻した事、
プロデューサー不在という物語のあり方、子供層狙いに行ったことにより幼稚さを感じさせた事、
そして結局のところアイマスのPが愛していたのは765のアイドルであった、という事

こういったことが積み重なった結果が、売上上の失敗につながってしまったのだと思います。

だからといって作品がどうしようもない駄作だったわけでもないし、アイドル達の輝きが
ボヤけていたわけでもない。それは確かであり、このDSならではの魅力は間違いなくありました


876プロという世界の魅力

アイドルの魅力というのがアイマスのキモであるのは言うまでもありませんが、その意味で、
876の3人が765の13人に見劣りした、ということは決してないと私は感じています。

765の13人とは決して被らない個性を持ちつつも、同じ世界観で生きるメンバーとして
過不足のないバランスを保っているという意味では、実に見事なキャラだとすら思います。

春香とは違ったタイプでありながらも、どこまでもまっすぐなメインヒロイン、
引きこもりという強烈な個性を持ちつつも、実に綺麗なバランスを持った絵理
アイマス史上かつてない「禁じ手」を使いながらも、嫌われるどころか愛される存在となった


メインの一人ひとりが魅力的であるのはもちろん、この3人の団結の強さもまた876の魅力です。
もちろん団結というのは765プロの象徴であり、13人の結びつきは絶対的でありますが、
876の3人は3人という少人数だからこその圧倒的な絆の強さがあり、それがゲームのシナリオで
しっかりと描かれている、各種展開でもそれが軸になる
、というのが大きなポイントとなります。

また、メインの3人以外にも、石川社長、日高舞、岡本まなみ、尾崎玲子、サイネリア、桜井夢子、
武田蒼一といったサブキャラクターもそれぞれが魅力を持った存在です。765においてはほとんど
サブキャラクターは存在自体していないために、余計にこのメンバーの個性が強く感じられます


ゲーム自体においては、最大のポイントはもちろん「プロデューサー」という存在が無いことで、
セルフプロデュース型、つまりはアイドル自体がプレイヤーキャラクターになる
ことがあります。

これ自体賛否両論あってしかるべきで、現行の「アイマスらしさ」とも外れているのですが、
新鮮といえば新鮮な形でありますし、必ずしも否定されるべきものでないのは確かだと思います。

ゲームのジャンル自体がシミュレーションではなくアドベンチャー、という形であり、難易度自体も
非常に低いものでしたが、マルチエンディングシステムであり、ボリュームという意味では十分。
アーケード→360→SP→DS、とどんどん難易度が低下しているのは事実であり、古参のPから
すれば不満の出るところではあったかと思いますが、これはこれで良かったのではと私は感じます。
まぁ、一応女子小学生をターゲットにしていた、ということも鑑みて考えれば、ですね。

そしてシナリオについても、それぞれの個性がフルに発揮されたものになっていますし、
何よりも個別の楽曲がシナリオの非常に重要な部分を担う、というあたりがポイントになります。
つまりはの「ALIVE」、絵理の「プリコグ」、の「Dazzling World」といった楽曲ですね。

シナリオと楽曲が結びつくというのはそれまでの765にはなく、まさに今現在のOFAのDLCで
実装されている形であるんですが、この形だと楽曲そのものに強い思い入れが出来るようになり
ますし、ライブステージでの披露というのが何よりもドラマチックに展開されることになります

個人的にはここがDS最大のキモ、といってもいいくらい素晴らしい構成だとすら感じています。


こうした魅力をいくつも持ったのが876プロという世界であったわけですが、しかしながら
興行的には成功を収めることがなく、「その後」は非常に厳しい展開となっていきます。

続きます。
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